MENU

無線充電規格”Qi2″ “Qi” “MagSafe”の違いと「iPhoneユーザーが選択するならどれ

こんにちは、 ”とむ(@tomu_apps)” と申します。

近年、スマホやイヤホン、スマートウォッチなど、私たちの生活に欠かせないガジェットが増え、それに伴い充電の手間も増えてきました。その解決策として「置くだけ充電」が登場し、特にiPhoneでは”Qi”や”MagSafe”、さらに新規格”Qi2″など複数の充電方式が使えるようになっています。

しかし、どの充電方式が自分に合っているのか悩む方も多いのではないでしょうか。本記事では、各規格の特長とメリット・デメリットを比較し、iPhoneユーザーにとって最適な充電方法について詳しく解説していきます。

information:
執筆時点、iPhone 16 シリーズが最新で、25WのMagSafeに対応していますが、筆者が所有している端末は”iPhone 15”シリーズです。このため、”Qi”や”MagSafe”は15W使用のものを用いています。

目次

“Qi2″とは

“Qi2″とは“WirelessPowerConsortium(WPC)”という工業団体が制定している規格です。

WPCはAppleやソニー、サムスン電子など、数百社が会員となっている工業団体です。

“Qi2″は旧規格である”Qi”に”MagSafe”の技術を取り入れて開発されたもので、次の点が改良されました。

  1. 充電効率の向上:”Qi2″では、より効率的な充電が可能となっており、エネルギーの伝送ロスが少なくなっています。これにより、デバイスの充電速度が向上し、消費電力が低減されます。
  2. 改善された充電位置の柔軟性:”Qi”ではデバイスの位置合わせが厳格であったため、少しズレただけで充電効率が大きく下がることがありました。しかし、”Qi”ではより広範な位置からでも効率的に充電できるように技術が改善されています。
  3. 安全性の強化:新しい”Qi2″規格では、デバイスや充電器の温度管理が強化されており、過熱によるリスクが低減されています。また、より精密な制御が可能となり、安全に充電できる環境が提供されます。
  4. 汎用性と互換性:”Qi2″は既存の”Qi”規格のデバイスとの後方互換性を保ちつつ、新しいデバイスに対してもより高いパフォーマンスを発揮します。これにより、多様なデバイスでの利用が想定され、より広範囲なアプリケーションがサポートされます。

各無線充電規格の比較

次に、各規格の比較になります。
不明瞭な表現もありますが、極力WPC1の情報から抜粋しているためです。

なお、対応デバイスについて”Qi2”欄にタブレット・ラックトップ等とありますが、執筆時点(2024年11月)で該当の製品は発売されていないのではと思います。

特徴QiQi2MagSafe
(iPhone)
対応製品発売年2010年(5W)
2015年(15W)
2024年2020年
最大電力15W“Qi”よりも高い15W
iPhone7.5W15W
(iPhone13以降)
15W
(iPhone12以降)
推奨入力電力※12W25W20W
位置合わせ無し磁気磁気
対応デバイススマホ・ウェアラブルQiに加えタブレット、ラップトップ 等iPhone、特定のアクセサリー
互換性“Qi”互換“Qi”互換
安全機能外来物検出などの基本的な安全機能より優れた熱管理・外来物検出機能(詳細不明)
金額
(約2,500円)

(約4,000円)

(約6,000円)
備考WPC認定規格WPC認定規格apple独自規格で製品化には承認が必要。
無線充電規格の比較
    * 金額はシンプルな充電パッド同士のスペックで比較
        Qi: Anker PowerWave Magnetic Pad Lite
        Qi2: Anker MagGo Wireless Charger (Pad)
        MagSafe(iPhone): Apple MagSafe充電器

ちなみに、上記製品のサイズ感はこのような感じ。MagSafeのコンパクトさはすごい。

Qi・Qi2・MagSafeのサイズ感比較 -> 代替テキスト
左からQi、Qi2、MagSafe。MagSafeが最も小型、Qi2が最も大型。
Qiの重量計測 -> 代替テキスト
Qiは約67g
Qi2の重量計測 -> 代替テキスト
Qi2は約102g この中で最重量

重量もMagSafeが最も軽い。もはや高額なMagSafeの価格はAppleの研究開発費だと思う。

MagSafeの重量計測 -> 代替テキスト
MagSafeは約53g 無線の中では最軽量
ケーブルの重量 -> 代替テキスト
参考までにUSB-CtoCシリコンケーブルは約36g。液晶付きでも最も軽い。
とむ
ちなみに”MagSafe互換”の製品はマグネットでピタッとできるだけで、充電性能自体は”Qi”(iPhoneだと最大7.5W)。紛らわしいので注意。
ぴょんた
Amazon等とメーカーの記載が間違っているのも結構ある。基本的にMagSafe規格の充電製品はAppleかベルキン位の高額製品しかないと思った方が間違いない。

実充電時間の比較

一番気になるのが「結局、どのくらい充電時間が違うのか?」というところ。

充電出力はあくまで「最大」を示しているだけで一定ではなく、変動します。

簡単に言うと充電残量の少ないときは最大出力、満充電に近づくにつれ次第に出力は低下します。(厳密には少し違うと思いますが。)

また、ピークパワーの差が2倍あっても常時出力が2倍あるわけではなく、ある程度充電されてくるとほとんど変わらない出力になったりします。

このため、「最大出力の差=充電時間」とはなりません

とむ
実際に充電時間を計測してみました。

前提条件

  • 充電機器は”iPhone13Pro”、”iPhone15ProMax”の2機種。
  • 充電開始は全て10%未満で放熱した状態から開始。
  • 10%を超えたタイミングをスタートとして計測。
  • 記録は”ショートカット”アプリで充電量が10%毎超えたタイミングで自動記録するように設定。100%に達した際に終了。(10%,20%,30%…100%)
  • 気温は室温(25℃程度)
  • 使用する各規格の充電器は次のとおり。
    • Qi(iPhone13Pro): CHOETECK 2in1ワイヤレス充電器(T317・執筆時点廃盤)
    • Qi(iPhone15ProMax): Anker PowerWave Magnetic Pad Lite
    • Qi2: Anker MagGo Wireless Charger (Pad)
    • MagSafe(iPhone): Apple MagSafe充電器(Pad)

計測結果

括弧外の時刻は10%からの経過時刻、括弧()内の値は10%間の所要時間(min)。
また、最下段には10%〜90%までにおける、10%間の平均時間(min)。(100%に至る時間は除外)

目印として、30分を経過した時間で”●”、60分を経過した時間に”★”を付記。

iPhone13Proの充電時間(計測)

充電方法Qi
(7.5W)
Qi2
(15W)
MagSafe
(15W)
USB-C to Lightning
(20W)
USB-A to Lightning
(12W)
10%
20%0:15(0:15)0:08(0:08)0:07(0:07)0:05(0:05)0:07(0:07)
30%●0:31(0:16)0:15(0:07)0:16(0:09)0:10(0:05)0:14(0:07)
40%0:48(0:17)0:25(0:10)●0:30(0:14)0:15(0:05)0:22(0:08)
50%★1:05(0:17)●0:35(0:10)0:45(0:15)0:21(0:06)0:28(0:06)
60%1:24(0:19)0:46(0:11)★1:01(0:16)0:27(0:06)●0:36(0:08)
70%1:49(0:25)★1:03(0:17)1:17(0:16)●0:35(0:08)0:45(0:09)
80%2:42(0:53)1:13(0:10)1:34(0:17)0:47(0:12)0:57(0:12)
90%2:59(0:17)1:29(0:16)1:53(0:19)★1:04(0:17)★1:14(0:17)
100%
(参考)
3:34(0:35)2:07(0:38)2:39(0:46)2:01(0:57)1:57(0:43)
ave.
10〜90%
(0:22)(0:11)(0:14)(0:08)(0:09)
iPhone13Proの充電時間(計測) ”USB-AtoLightning”が健闘していて驚いた。

iPhone15ProMaxの充電時間(計測)

充電方法Qi
(7.5W)
Qi2
(15W)
MagSafe
(15W)
USB-C to C
(30W)
USB-A to C
(7.5W)
10%
20%0:16(0:16)0:08(0:08)0:14(0:14)0:05(0:05)0:16(0:16)
30%●0:33(0:17)0:21(0:13)0:27(0:13)0:10(0:05)●0:33(0:17)
40%0:50(0:17)●0:32(0:11)●0:39(0:12)0:15(0:05)0:49(0:16)
50%★1:08(0:18)0:44(0:12)0:52(0:13)0:21(0:06)★1:05(0:16)
60%1:25(0:17)0:56(0:12)★1:07(0:15)0:28(0:07)1:22(0:17)
70%1:43(0:18)★1:09(0:13)1:23(0:16)●0:37(0:09)1:39(0:17)
80%2:02(0:19)1:24(0:15)1:42(0:19)0:51(0:14)1:56(0:17)
90%2:21(0:19)1:42(0:18)1:59(0:17)★1:10(0:19)2:16(0:20)
100%
(参考)
3:00(0:39)2:23(0:41)2:36(0:37)2:05(0:55)3:06(0:50)
ave.
10〜90%
ave(0:17)ave(0:12)ave(0:14)ave(0:08)ave(0:17)
iPhone15ProMaxの充電時間(計測)”USB-AtoC”は”Qi”とほとんど同じ。

特徴・考察

  1. 結果(充電速度):
    有線 CtoC >= 有線 AtoLightning > Qi2 > MagSafe > 有線AtoC = Qi
  2. 備考:
    • Lightning端子(iPhone13Pro)は USB-C・USB-A どちらからの給電でも所要時間は大きく変わらない。
      (ライトニング端子は独自規格でUSB-Aからは12W
    • USB-C端子(iPhone15ProMax)は USB-C・USB-A から給電する場合で差がある。
      (USB規格に準拠したためUSB-Aからは7.5W

ニーズ別の最適規格は?

「最適」を探していくにあたって、判断に必要な情報を下表にまとめました。

これまでの検証のデータに加えて、私が実生活で感じた「長所」「短所」を付け加えています。

有線Qi2MagSafeQi
30分充電量70%40%40%30%
60分充電量90%70%60%50%
10%平均時間8分12分14分17分
重量最軽量
長所– 充電速度最速
– 携帯性最高
– ケーブル抜き差し不要の手軽さ
– 充電速度と手軽さのバランス良好
– ケーブル抜き差し不要の手軽さ– ケーブル抜き差し不要の手軽さ
– 必要電圧が低く気が楽
短所– ケーブル脱着の煩わしさ
– Lightning端子機器があるとケーブルが増える
– 急速充電の常用はバッテリーが心配
– MagSafe機器を常用していると結局充電に外す一手間
– 比較的携帯性は悪い
– 必要電圧が高く気を使う必要あり
– MagSafe機器を常用していると結局充電に外す一手間
– 発熱に課題あり(希に充電停止する)
– MagSafe機器を常用していると結局充電に外す一手間
– 充電速度が遅い
主要ポイントのまとめと筆者の経験で感じた長所・短所

長所・短所(筆者の実生活を元に感じたこと)

  1. ケーブルの抜き差し: 思っている以上に煩わしい。特に睡眠前、暗闇の中、ケーブルを探してスマホを持ち上げて充填口を目視して差し込む…MagSafe対応なら近づけるだけでバチッと充電してくれる。
  2. 必要電圧が低く気が楽: 車載のUSB-C等の備え付けのポートは20Wまでの出力となっているものが多々ある。”Qi2″は必要な入力電力が25Wとなっている製品もあり、ある程度気を遣わないと性能を発揮できない(むしろ遅い)ケースがある。”Qi”の場合は’2in1’くらいまでの製品なら大概20Wに収まるため、適当に使っても規定の性能が発揮できる。
  3. 携帯性について: 無線充電の機器はシンプルなPadタイプであってもケーブル単体と比べるとかなり邪魔に感じる。そもそも、携帯するということは出先での充電を想定していることが多いので、軽量コンパクトかつ充電速度最速の有線が最高。ただし、宿泊となると結論は異なり、3in1の無線充電機器にケーブル1本で済むこともあり、結論はことなってくる。
  4. 発熱: “Qi””Qi2″いずれも発熱する。特に、夏場に鞄内の無線充電対応モバイルバッテリーを用いていると熱原因でまともに充電できないことも多い。また、は室内充電でも充電が停止していることも多々あり、特に熱問題があるように感じる。
  5. 充電速度について: 有線・”Qi2″の充電速度であれば実生活で不満を感じることは無かった。ただし、では上記発熱があり、思うように充電が進んでいないこともあり、不安だった。”Qi”はそもそも充電速度が遅く、満足できなかった。

次はこれらを踏まえて、ニーズを満たす各充電規格について述べていきます。
性能や私の経験に基づいて判断しています。

Qi

安価で手軽な長所を生かせるものが向いている。
しっかり充電というより、スマホを定位置に置いておけば気持ち充電されているくらいの感覚で使うのがよい。

向いてる向いていない
– デスクや寝室でスマホを置くだけで充電したい
– 充電速度よりも見た目や手軽さを重視する
– 2in1、3in1の製品を使ってデスクや寝室に散乱するケーブルをスッキリさせたい(なるべく安価に)
– 短時間でしっかり充電したい
– メインの充電環境として利用したい
“Qi” 向き不向き

Qi2

充電性能とケーブル脱着不要の手軽さのバランスが良い。
ただし、比較的、本体が重く大きい製品が多い印象がある。
また、結構大きな電力を供給しないと本来性能が発揮できないので要注意。(3in1クラスになると40W以上必要な製品もある)

向いてる向いていない
– 無線でも安定した充電速度が欲しい
– 位置合わせが面倒で磁気で固定したい
– 2in1、3in1の製品を使ってデスクや寝室に散乱するケーブルをスッキリさせたい、旅行先の充電環境を楽に整えたい
– 昼休みや移動の合間など短時間(30分未満)で多く充電したい
– 位置ゲーや高グラフィックゲームなど本体が熱を持っている状態で充電したい
– 荷物を軽くしたい
“Qi2” 向き不向き

MagSafe (iPhone)

充電性能だけで見れば”Qi2″の下位交換。
しかも、基本的に”Qi2″の方が安価で入手もできる。
しかしながら、Apple純正のPadタイプは圧倒的に小型・薄型・軽量、形状も平面なので置きやすく扱いやすい。
Padタイプで比較すると携帯性に優れているように感じるが、恐らく、多くの方が探しているであろう卓上タイプの2in1、3in1となるとそのメリットは薄い。

向いてる向いていない
– セール等で”Qi2″より安価に入手できる機会がある
– 小型・軽量なPadタイプの製品がほしい。
– 限られた時間(短時間)で頻繁に充電する。熱問題で上手く充電できなかったケースが生じる可能性がある
“MagSafe” 向き不向き

有線接続

抜き差しの手間はあるが、圧倒的速度と安定感。USB-CtoCであれば、一本持ち運ぶだけでiPhone・iPad・Mac全て充電できてもっとおミニマル。

向いてる向いていない
– 短時間でしっかり充電が必要な方(例: 外出前や朝の充電)
– 高負荷のゲームや位置情報アプリで発熱しやすい使い方をする方
– 外出時の荷物を少なく軽くしたい。
– ケーブルの抜き差しが面倒な方
– 就寝時の充電にストレスを感じる方
有線 向き不向き

筆者の場合

一例として私の場合です。

執筆日時点でiPhone15ProMaxを使用しています。
用途は下記がメインですが、ベッド脇にQi2、自宅デスクにMagSafe、職場デスク脇にQiの運用で困ることはありません。

  • カメラ(静止画8割)
  • インターネット共有(Instant Hotspot)
  • WEB閲覧
  • 動画視聴
  • GoogleMap(外出時)
  • 子供とゲーム(Minecraft)
とむ
iPhone13Proを使用していた時に、脱ライトニングをしようとして”Qi”メインの運用を試みたけど挫折したな。
ぴょんた
毎日寝る前にしっかりセットすれば問題なさそうなんだけど、案外難しいよな。
とむ
置いたと思っててもズレてて充電できておらず、朝に慌ててケーブル指したりね汗
ぴょんた
”Qi2”の場合、寝る前に置いておけばマグネットで定位置だし、なんなら充電忘れても朝セットすればスッカラカンでも外出前に80%くらいまで回復するもんな。
とむ
子供の朝の準備があるから寝坊なんてしてられないから、確実に1時間はあるからね苦笑

最後に

実は本記事、”Qi2″の良さを伝えようとして書き始めたのですが、充電時間の計測を行なっているとライトニング端子の有能さに気付き「未だiPhoneに付属していたUSB-A端子の充電器を使用している現実を踏まえると、実はAppleは広い範囲で使用者に恩恵のあるライトニングを守っていただけかもしれない。」などと空想し、執筆していて筆者自身が楽しんでいました。

iPhone16シリーズは25Wの無線充電にも対応しているみたいで、気になるところです。

長文となりましたが、お付き合いいただきありがとうございました。


  1. Wireless Power Consortium:Appleやソニー、サムスン電子など数百社が会員となっている工業団体。 ↩︎

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

30代半ばで2児の子持ちのサラリーマン。

仕事は土木設計ですが、日々膨大な資料の量やアナログ的なやりとりに不満あり。
どうにか楽にできないかと模索し続けている間に、気づけばガジェット・アプリ沼にはまっている。

コーヒー・車・温泉が趣味。
天気が良ければ妻や子供を連れ回して温泉を巡ります。

目次